スペインのクリスマスソング「ビジャンシーコ」とサンボンバ

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スペインのクリスマスでは「ビジャンシーコ」と呼ばれるクリスマスソングが歌われます。12月になると街中でビジャンシーコを聴くように。

ビジャンシーコの誕生はルネサンス期。やがて、ファンダンゴ、ブレリア、タンゴなどフラメンコの曲種のテイストにアレンジされたビジャンシーコも登場します。

スペイン、特にアンダルシアのクリスマスではビジャンシーコと共に演奏されるサンボンバという楽器も特徴的。12月にヘレスに行くと、変わった音色のサンボンバの音を聴くこともできます。

というわけで、スペインのクリスマスソング「ビジャンシーコ」とサンボンバについて!

目次

ビジャンシーコとは

ビジャンシーコ(villancico)とは、スペインのクリスマスソング

日本人的にはクリスマスソングというと「あわてんぼうの〜サンタクロース」とか「真っ赤なおっはっなっの〜」という歌が思い浮かびますが、ビジャンシーコは民謡的な地域色&宗教色のある歌です。

民謡を起源とするとも言われる「ビジャンシーコ」の登場はルネサンス期で、フラメンコよりも全然古いです。韻律詩である「ロマンセ」も同様の時期。どちらも世俗曲ですが、ビジャンシーコは宗教的内容のこともあります。

ビジャンシーコはセビジャーナスのように何番までかがセットになっていて、詩の部分とエストリビージョと呼ばれるような繰り返しの部分で構成されています。

かつては教会のミサでも歌われたそうですが、やがてビジャンシーコはアンダルシアの各地域で歌われるご当地フラメンコのテイストを加えたアレンジがされるように。

例えばヘレスのvillancico por bulerias、トリアナのvillancico por tangos、ウエルバのvillancico por fandangosなどは、ビジャンシーコがフラメンコ調になったものです。

スペインで有名なビジャンシーコは、「グロリア」や「カンパニジェーロ」と呼ばれるもの。

ヘレスの歌い手マカニータが歌い、コーラスでヘレスのペーニャ「Tío José de Paula」が参加しているこのビジャンシーコ「グロリア」は有名なのではないかな?

「カンパニジェーロ」の名手と言われたのは、ニーニャ・デ・ラ・プエブラ。なんとなく切ない旋律が特徴。アンダルシアを代表するビジャンシーコで、多くの人が知っています。

クリスマスの時期になると、家族が集まった時にビジャンシーコが歌われたり、何かの催しでビジャンシーコが歌われる場面に遭遇します。

地元の人にとっては馴染みがあるクリスマスソングだから、みんな楽しそうにスラスラ歌うんだよー。「Ande Ande Ande〜♪」ってやつもよく歌われてますね。

私は全然ビジャンシーコを知らないので、その瞬間はかなりアウェイ感があります。

しかし、スペイン在住者さんや、在住経験のある人にツイッターで聞いたら、ビジャンシーコは歌わないという人も多いようです。

特に若者はほとんど歌わないみたい。同居人にも聞いたけど、2人とも「歌わない。moniの方が詳しいんじゃない?」くらいの反応でした。汗。

サンボンバとは

サンボンバとはビジャンシーコと一緒に演奏される楽器、擦奏太鼓(フリクションドラム)のこと。

大きな壺のようなものに皮が貼られ、真ん中に棒で穴を開けて棒を上下に動かすことで音を出しています。

スペインの楽器サンボンバ
クリスマスに欠かせないサンボンバ

風圧の音なのか?音の正体は不明です。

サンボンバの音は変な話、おならみたい。動物の鳴き声にも聴こえるかなりユニークな音です。

サンボンバだけの音はこちらで確認してみてください。

ヘレスのサンボンバ

サンボンバと言えばヘレス・デ・ラ・フロンテーラが有名。

11月末頃から12月末の年末にかけて、「サンボンバ」と呼ばれる催しがヘレスのフラメンコのペーニャやバル、劇場などで多く開催されます。昼間は広場など街中で演奏しているのも見かける。

ヘレスのボデガで行われたサンボンバ
ボデガで行われたサンボンバ

ペーニャの会員たちや常連さんたち、フラメンコのアーティストなどがビジャンシーコを歌いながらサンボンバを演奏。

一部のペーニャや劇場ではショーのような扱いになったりもしていますが、基本的には地元の人のクリスマスパーティーのイメージです。

カンテの町とも言われるヘレスでは「サンボンバ」の催しがやがてフラメンコのフィエスタに移っていくこともあり、各ペーニャでは夜中までフィエスタが続いたりします。

ヘレスでビジャンシーコが歌われるサンボンバが生まれた起源について、こんな話を聞きました。

昔は現在のような家やマンションではなく、共同住宅のような場所に人々が住んでいた。
母親たちがクリスマスの日に共同のキッチンでアンダルシアのクリスマス菓子 “pestiño(ペスティーニョ)” などを作っている間、中庭に集まった子供たちや父親がクリスマス時期のお酒 “anis(アニス)” を飲みながらビジャンシーコを歌って待っていた。

やがてそのような集合住宅はなくなり、バルやペーニャでサンボンバが行われる現在のような形になったようです。

12月の特に週末にヘレスに行くと、ペーニャをはしごしながら「サンボンバ」が楽しめるはず!

セビリアのサンボンバ

セビリアでは「サンボンバ」と名前がつく催しがありますが、そのほとんどでは楽器サンボンバは登場しません。

クリスマス時期の催しを「サンボンバ」と呼ぶだけで、実際にはフラメンコのフィエスタだったりします。

フラメンコのフィエスタ
フラメンコのフィエスタ

クリスマスの時期ということをちょっぴり意識してビジャンシーコ・ポル・ブレリアなどを歌う人はいるかも。という感じですが、ヘレスのサンボンバの雰囲気はセビリアでは味わえない気がします。

セビリアとヘレス、どちらもフラメンコが盛んと言われる町ですが、フラメンコの文化が根付いているという意味ではヘレスはやはり強いなと感じます。

セビリアは街が大きすぎるし規制が厳しいのか、広場でサンボンバを見たり、夜な夜なペーニャでフィエスタが行われるようなことは、ほとんどなくなってしまったのでは。少し残念。

アンダルシアのクリスマスはビジャンシーコとサンボンバ

ビジャンシーコにサンボンバ。どちらも日本とは全く異なる文化で、初めてスペインでクリスマスを過ごした時にはわけがわからずでした。

「サンボンバってこれだよ」とヘレスで楽器を紹介されたけど、ポカン。「ビジャンシーコはフラメンコでも歌われている」と言われて、はて?

何度かアンダルシアのクリスマスを体験して、ようやくビジャンシーコを歌う文化やヘレスのサンボンバについて少しずつ理解してきたところです。

アンダルシアでフラメンコなクリスマスを過ごしてみたかったら、「サンボンバ」と呼ばれる催しに行ってみてください。特にヘレスはフラメンコ色が強いと思います。

今年は4年ぶりにヘレスのサンボンバに行くので楽しみです〜♪

最後まで読んでくれてありがとう。
Hasta luegui!!!

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この記事を書いた人

スペイン語とスペイン文化+αを学ぶため会社を退職して2015年〜2021年までスペインのセビージャ暮らし▷2024年東京大学文学部に学士入学して現在は美学芸術学専修の3年生。好きな言葉は「我々は無理をしない」のふなっしー推しなっし。多言語学習中。X(twitter)は悩める大学生活や勉強に関するポスト多め。

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