セビリア映画祭でフラメンコのドキュメンタリー映画「Se prohíbe el cante」を観てきました。
内容は、カンタオーラのエスペランサ・フェルナンデスがアンダルシアのペーニャを巡り、同じくアーティストとして活動中のゲストを迎えて対談するというもの。
途中でフラメンコジャーナリストやペーニャの代表を務める人たちの話を交えながら、ペーニャとはどういう場所なのか、かつてのペーニャはどんなものだったのかなど、いろいろ想像を掻き立てられました。
セビリア映画祭でフラメンコドキュメンタリー「Se prohíbe el cante」を観て思ったことを日記に綴りたいと思います。
この映画が今後上映される機会があるかわからないけど、ちょっぴりネタバレするので観る予定の方はご注意くださいね。
Se prohíbe el cante
このドキュメンタリー映画の題名は「Se prohíbe el cante」そのまま訳すと
歌うことは禁止されています。
というもの。なぜこの題名がついたかということが冒頭でちょっと説明されていました。
かつてはアーティストたちが仕事を求めて、バルで歌ったりすることがあったそうです。騒音問題などでやがて禁止となり、アーティストたちの仕事の場はペーニャと呼ばれる愛好家たちが集まる場所に変わりました。
ペーニャが誕生したのは1970年代〜1980年代頃と言ってたかな?意外と最近なんだなと思いました。
バルには “Se prohíbe el cante” という張り紙がされ、アーティストが仕事を求めて大声でバルで歌うことは見られなくなったのだそうです。
アーティストとペーニャ
映画の内容はカンタオーラのエスペランサ・フェルナンデスがアーティストを尋ねて対談し、そのアーティストとペーニャで公演をするというもの。
エスペランサと対談したアーティストは出演順に、マリーナ・エレディア、ロシオ・マルケス、アルカンヘル、ミゲル・ポベダです。有名どころを揃えました!って感じ。
子供の頃から見てきたペーニャとはどんな場所だったのか?どのようにペーニャで修行したのか?など、アーティストたちのペーニャの思い出とともに対談は進みます。
対談が終わると画面はペーニャの舞台に切り替わり、エスペランサとそれぞれのアーティストのライブ映像に。
マリーナ・エレディアとはタンゴ、ロシオ・マルケスとはグアヒーラ・ポル・ブレリア?、アルカンヘルとはファンダンゴ・デ・ウエルバ、ミゲル・ポベダとはタンゴと、それぞれのアーティストの十八番の曲をエスペランサが一緒に歌います。
興味深かったのは、例えばマリーナ・エレディアとはグラナダのペーニャで対談したけど、ライブはカディスのペルラ・デ・カディスのペーニャで行われていたり、アルカンヘルとの対談はボデガだったけどマラガのペーニャだったりと、ライブで選ばれたペーニャは必ずしも地元でなかったということ。
先日ファン・ビジャールのオメナヘをカディスで観て感じたのだけど、アーティストにとって地元で公演するって特別なことだと思ったし、観ている方も地元のアーティストだと熱が入る。
だから、地元のペーニャで歌った方がよかったんじゃないかな〜?と思いました。ミゲル・ポベダに至ってはもはやペーニャではなく、普通の劇場のステージだったし…。
ペーニャが開いている日とアーティストのスケジュールの関係で、地元のペーニャでできなかったと後で説明していましたが。みなさん売れっ子だからね。
私は特別誰かのファンというわけではないのですが、アルカンヘルのファンダンゴ・デ・ウエルバがものすごく良かったです。ファンダンゴはアルカンヘルの十八番でよく歌っているイメージだけど、地元に対しての強い想いをすごく感じた。
フラメンコのペーニャ
映画の途中ではフラメンコのジャーナリストやペーニャの代表が出てきて、ペーニャの歴史やペーニャがどんな場所であるかの小話を交えます。
最近はペーニャに若者が来なくなり、ペーニャは金銭的な問題を抱えているという話も出ました。そのせいでうまく機能できなくなってしまったペーニャもあるのだと。
ペーニャとは愛好家が集まる場所。会員という形で年会費を払う人たちがペーニャを支えています。
ペーニャで公演があれば、会員以外の一般の人もお客さんとして入場可能。セビリアのペーニャは有料ですが、ヘレスのペーニャでは毎週のように無料で素晴らしいアーティストたちのライブが観られたりします。
ヘレスはペーニャは無料で入れるのが太っ腹だし、お客さんもたくさん入ってるし、とてもうまく機能しているのかなと思いました。市やヘレスの企業からの援助があるのかな…?
しかし、会員たちの年会費だけでは存続し続けられない苦しさもペーニャにはあるようです。会員になりたくても会費が高くて会員になれないという逆のジレンマもあるのかな。
映画上映後の座談会
映画が終わった後はちょっとした座談会がありました。映画の監督や、出演したジャーナリスト、ペーニャ代表が参加し、会場からの質問タイムもあり。
会場から「ヘレスのアーティストやヘレスのペーニャについて言及がなかったですがなぜ?」という質問が出ました。質問したのはヘレスから来た若い男の子。ペーニャでフラメンコを観るのが好きで、よく行ってるのだそう。
映画製作者側の回答は、尺の問題でたくさんのアーティストを出せなかったのと、各地のペーニャを紹介しきれなかったのですが、特に大意はありませんとのこと。
わからなくはないですが、私も質問者さんと同じこと思いました。カンテの街と言われるヘレスのアーティストが一人も登場せず、アンダルシアの中でもお客さんで常に賑わうヘレスのペーニャが出なかったのは残念。
出演したアーティストは劇場を埋められるような名が知られた人ばかりだったので、割と一般向けに作られた映画だったのかなともちょっと思ったり…しました。
ペーニャのフラメンコ
ペーニャは劇場公演のような商業的なフラメンコと、バルで夜な夜な繰り広げられるような生活の中のフラメンコとのちょうど中間にあると言っている人がいました。
劇場公演やタブラオと違って、ペーニャではより一体感のあるライブが楽しめる感覚があります。
劇場公演のようなリハーサルをきっちりしたものではなく、タブラオのようにその日のお仕事メンバーで舞台に立つのでもなく、信頼しているアーティストたちが揃って行うペーニャのライブは雰囲気も熱量も違うものです。
日本にいた頃、スペインのアンダルシアのペーニャに行ってみたくてしょうがありませんでした。ペーニャってどんなところ?と期待に胸を膨らませてた。
セビリアに住み始めてペーニャに気軽に行けるようになった今も、観たいアーティストのペーニャのライブはいつもとても楽しみです。ペーニャでしか観られないものがあると思うから。
アンダルシアのフラメンコペーニャの文化が衰退しないでいつまでもあり続けてほしいです。
最後まで読んでくれてありがとう。
Hasta luegui!!!
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