スペインに引っ越してきてからこれまでに2度(2016年と2017年)、ヘレスフェスティバルの公演を観に行きました。
2018年は私の先生でもあり友人でもあるMiguel Angel Heredia(ミゲル・アンヘル・エレディア)の公演にお手伝いとして入らせてもらうという貴重な体験をさせてもらいました。
なかなかできない経験だし、こんな機会を与えてくれたミゲルには感謝です。
Festival de Jerezはフラメンコのフェスティバル
Festival de Jerez(ヘレスのフェスティバル)は、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラで実施されるフラメンコのフェスティバル。
毎月2月〜3月にかけて行われるFestival de Jerez(ヘレスのフェスティバル)、2018年は2月23日〜3月10日まででした。
昼には多くのクラスが行われ、夜には複数のフラメンコの公演が劇場やサラ、ペーニャで行われるというまさにフラメンコの祭典で、毎年外国から多くの人が訪れます。
ヘレスフェスティバルのクラスや公演については公式ページに多くの情報が載っています。
ヘレスフェスティバルの時期は公式クラス以外にもヘレスでクラスが開催されるから、公式クラス以外もクラス情報をチェックするのがおすすめです。
お手伝いの話は急にやってきた
さて、フラメンコさんたちには有名すぎるヘレスフェスティバルで
「お手伝いをやらないか」
という話は突然やってきました。
2月28日23:59(正確には3月1日0:00)のMiguel Angel Heredia(ミゲル・アンヘル・エレディア)のサラ・コンパニアでの公演で手伝いをしてもらえないかというものでした。
私は2月28日のMiguel Angel Heredia(ミゲル・アンヘル・エレディア)の公演の1列目の席を既に購入していました。
最前列で見る気マンマンで楽しみにしていた私。
ミゲルと私
Miguel Angel Heredia(ミゲル・アンヘル・エレディア、以降ミゲルと書きます)は、私が現在もクラスを受けている先生であり、とても仲良しの大切な友達です。
私は日本でフラメンコを勉強していた頃から、毎年のように来日するミゲルに習っていました。
ミゲルが日本に来た時には、フラメンコだけでなくスペイン語を教えてもらったり、一緒に買い物したり、美味しいものを食べに行ったり、ととても仲良くさせてもらっていました。
それは今も変わらずで、家に招いてくれてご飯を作ってくれたり、ビーチに連れて行ってくれたり、仕事場にお邪魔したり、とクラス以外で色々と教えてくれて笑いと刺激を与えてくれています。最近は笑いが多いかな。
ミゲルがスペインやフラメンコのことを色々と教えてくれたから、スペインに行きたいという思いを持つようになったのも事実です。
ミゲル初の劇場公演
そんなミゲルが昨年2017年のヘレスフェスティバルのペーニャの公演で賞をもらい、2018年はサラ・コンパニアでの劇場公演をすることになりました。
ミゲルが自身プロデュースの公演、それも劇場での公演を行うのは人生初。
ミゲルはヘレス出身の踊り手で現在もヘレスで活動していますが、ヘレスのアーティストだからと言ってヘレスフェスティバルの公演がしやすいというわけではないの。
ヘレスフェスティバルの公演は、舞踊団だったり、外国で活躍しているようなネームバリューのアーティストの公演が多く、地元ヘレス出身のアーティストたちの公演は意外と見られないのです。
今回は、ヘレス出身のミゲルがヘレスのフェスティバルで評価されて自身の力で掴み取った公演。
ミゲルの人生においてとても大切で思い出に残る公演に、お手伝いとして参加させていただく、こんなに光栄なことはありません!
というミゲルのお願いに即答で
と答えました。
何を手伝うのかはよくわからなかったけど
「ミゲルの公演に少しでも役に立ちたい!」
そんな気持ちでした。
前日のリハーサル見学
当日お手伝いに入るにあたり、前日のリハーサルを見学させてもらいました。
ヘレスのミゲルのスタジオで行われるリハーサル。
ミゲルは既に歌い手やギタリストと数回リハーサルを行っていたので、おおよその流れはみんなわかっている状態。前日のリハーサルではゲストバイレのあのConcha Vargas(コンチャ・バルガス)との合わせ。
コンチャ・バルガスも私が日本で何度か習った大好きな踊り手。コンチャが動くだけで空気が動く。フラメンカ・ヒターナを目の当たりにして、リハーサルからその圧倒的なパワーに驚く。
3人のカンタオール、2人のギタリスト、1人のパルメーロ。ミゲルが信頼して一緒に舞台を作っていくと決めたそれぞれのアーティストは、一流の方々ばかり。
ミゲルのお陰で知り合ったアーティストたちは、お水を渡せば「ありがとう」と我に普通に接してくれる。うぅ、みんな優しい。
ミゲルがギタリストと打ち合わせをしている間は、コンチャと私で近くのバルでお茶。東京でクラスを受けた時に衝撃を受けた、パワーをどさっとくれてなんとも言えない感情を湧き上がらせてくれた
コンチャと自分が今、お茶してる…!!
素晴らしいアーティストたちがヘレスフェスティバルの舞台を作っていく。その中で僅かながらお手伝いをさせてもらえることに、とてつもない幸せと大いなる緊張を感じました。
いよいよ公演当日
大切な公演前日なのにおうちに泊めてくれたミゲル。家では普通通り。(に振舞っていたらしい)
そして、迎えた公演当日。
朝から食べる!
朝から人里離れたバルでがっつり食べる。
すごく大きいトスターダを!
トスターダのお供は生ハムのパテやマンテカと呼ばれるラードのようなものなど。マンテカは私は苦手なので、生ハムのパテを。
劇場で音合わせ
遅めの朝食を食べた後は、家に帰ってしばし休憩。
公演当日のミゲルはというと、ちょっとそわそわしているけど普段とあまり変わらないテンション。ミゲルの彼氏はいつも通り落ち着いている。
公演は0時からだけど16時過ぎには劇場に向かいました。劇場には既にミゲルのお兄さんでギタリストのイスマエルが音響チェックをしていました。
ミゲルも音のチェックをしている間、他のアーティストたちが順々に到着。音のチェックをしていきます。
アーティストたちが音のチェックをしている間、ミゲルはそれぞれのアーティストに気を配り、落ち着いたいつも通りの感じで話しかけてる。
一番緊張しているのは自分であろうに、それを見せることなく、集中し過ぎて周りが見えなくなることもなく、その姿を頼もしく感じました。
きっと公演はうまくいく…!
コンチャ楽屋入り
そしてコンチャ・バルガスの楽屋入り。日本の着物をリメイクした素敵な羽織物で登場。
コンチャとミゲルの合わせ部分をリハーサルして、私のお手伝いの部分も確認。リハーサルはサクッと終了。そして、コンチャと楽屋で話し込むミゲル。私もちゃっかり同席。
そこで気づいたのだけど、私たち朝にトスターダを食べたっきり何も食べてないやーん。
ということで、コンチャの娘カルメンに近くのバルでサンドイッチを買ってきてもらうことにしました。この時点で21時頃。公演まではまだまだ時間があります。
いよいよ本番
本番まで1時間になったところで、ミゲルは最終準備に入りました。バッチリ舞台化粧してモレーナになり、クリスマスパレードのバルタサールのようになりました。
開演30分前、カンタオールたちのお水を準備して楽屋を覗いたら、アーティストたちが変な日本語をしゃべってる。笑。「ワカラナイ、ワカッタ」「サシミ、サシミ」など。本番前でこのリラックス。さすが。
私の方が緊張しとるがな!
開演15分前、集中モードに入る直前のミゲルの手を握り、公演の成功を祈って見送りました。
開演5分前、カンタオールやギタリストもスタンバイ。カンタオールは声出ししたり、水を飲んだりして最終調整。一気にアーティストモードにみんなが切り替わります。
そして開演
私は袖から公演を見たことはなく、実は初めて。
アーティストたちの程よい緊張感が直に伝わる感じ。
これは特等席だ。
録音されたリブレのカンテ「ロマンセ」から始まって、そこからブレリアに変わり、私の大好きな「ミゲルのブレリア」を魅せてくれたミゲル。いつでも全力なマヌエル・デ・ラ・ニナの歌は、ヘレスのソニケテを感じるアイレたっぷりなブレリア。
ヘレスのブレリアを魅せてくれた後は、「シギリージャ」。ルイス・モネオの歌にOleeee、ルイスの歌は控えめだけど愛情深く、心臓を大きく持っていかれるのです。ルイスに呼応するミゲルのバイレにもOleeee…
シギリージャが終わったら早着替えして「タンゴ」。新調したミゲルの衣装は薄いグリーンに黒の水玉。フリルがついてミゲルらしい、めちゃフラメンコな衣装。
この日の「タンゴ・デ・グラナダ」は会場のみんなも超良かったと口を揃えて言う、直球フラメンコを愛するミゲルのタンゴ。ミゲル・ラビのタンゴはこの日初めて聴いて、ぐいぐい引き込まれました。
タンゴ・デ・グラナダのレトラ(歌詞)はミゲルがチョイスしたのだそうです。
タンゴの後に一旦袖にはけてきたミゲルはお水をがぶ飲みしていたけど、落ち着いているみたい。
ただ、もっと食べておくべきだったと…!!
そう、私たち今日トスターダとサンドイッチしか食べてないからね。汗。
そして、新調した黒い衣装で「ソレア」。マイクのトラブルがあったものの、落ち着いて歌を大切にする、王道のソレアでした。
私の最大のお手伝いの部分は無事終わって(マジでホッとした)、ゲストバイレのコンチャ・バルガスの登場。
コンチャが大好きなミゲルはコンチャの振り付けは全部知っている。だから2人はリハで少し確認したくらいで、振り付けの合わせはしていないのです。
コンチャが即興で踊るのに合わせてミゲルもコンチャに呼応していく。これは、コンチャをよく見ているミゲルだからできること。素晴らしい瞬間。
最後はなんと!
ミゲルの歌で幕を閉じました。
この日のミゲルの歌は神がかっていた。Quejioがあって、フラメンコの歌を愛するミゲルの気持ちがストレートに伝わる歌。
アーティストたちの挨拶が終わって舞台に幕が閉じるまでの間、温かい気持ちに包まれた私でした。
SENTÍO CABAL “BAILANDO PA CANTÁ”
今回のMiguel Angel Heredia(ミゲル・アンヘル・エレディア)の公演は「SENTÍO CABAL “BAILANDO PA CANTÁ」という名前でした。
cabales
フィエスタなどで最後まで残っている数人のaficionadosのこと
たぶんフラメンキートな言葉#スペイン語 #フラメンコ #本日の学び — moni@セビージャで修行中3年目 (@moni0623) 2017年11月28日
歌とともに踊る、ミゲルのフラメンコに対するまっすぐな気持ち、真摯な姿勢が伝わる素晴らしい公演でした。
最後まで読んでくれてありがとう。
Hasta luegui!!!
コメント